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May 12, 2005

『太陽の簒奪者』

『太陽の簒奪者』正統派、と言うのかも知れません。野尻抱介著、『太陽の簒奪者』。

太陽をとりまくリングが形成されて陥った人類の危機。そこから始まる異星人とのファースト・コンタクトを描いた作品です。

例によって異星人との遭遇はクライマックス。正体の掴めない、考えることも分からない相手とのやり取りが続きますが、そこに至るまで繰り出されるアイデアのコンボは、言うなれば正統派ハードSF? 好奇心で先を読みたいという気持ちにさせられたのは久しぶりでした。

ファースト・コンタクトもの、というのは幾つか読みましたし、映画でも挙げられます(流行った?)が、いずれも肝心の宇宙人はラストにおまけのように登場するだけ。まあ定義から言ったら"その後"に重きを置くことはナンセンスなんですが。煽るだけ煽っておいてお預け、みたいでわりとコンスタントに不満の残るところです(笑)。

あるいはファースト・コンタクトまではSF、それ以降は別の領域かも知れません。一度出会ってしまえば、技術的なことより心理学とか社会学とか、相手をどうやって受け容れるか、そのルール作りをどうするか、という問題になりますから。

狭い地球上で認識力も類似の地球人同士でも齟齬が生じるのに、相手が別の歴史を持つ別の生物ならどうなってしまうのか、というのも面白いかも知れませんけど……労力のわりに実効性が少ない。リアルでありつつエンターテイメント、という形には仕上げにくいでしょうね。

この『太陽の簒奪者』には、そのファースト・コンタクトと同時に、人間以上というより人間の持つ以外の知能とは、というテーマも見えます。知能論というか認知学とか、そういう領域かも知れません。SFという土台で異星人を登場させれば、どこかで行き当たる問題ですね……大雑把なSFだとすっとばすところでもあります。

ロボットやナノテクがフツウに、現実的な科学として語られるようになった現在です。SFは科学を包含する、としたら言い過ぎでしょうが、コットウムケイではなく、かと言ってハード過ぎるでもなく、魅力的なフロンティアを提供し続けて欲しいものです。


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