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May 09, 2005

『ポンペイの四日間』

『ポンペイの四日間』歴史小説、というほど仰々しくはありません。ロバート・ハリス著、菊池よしみ訳、『ポンペイの四日間』。かと言って軽くもありませんが。映画などでおなじみの筋を連ねているので、小難しいのはちょっと、という人でも大丈夫でしょう。

古代ローマ帝国を背景にしたパニックもの……として良いと思います。タイトルにある通り、ポンペイが灰の中へ沈むまでの四日間が舞台。噴火の兆候、火山性の地震(彼らはそれとは知りませんが)の続くなか、運悪く着任することになった水道の管理官を主人公とした物語。

断水した水道を修復する急な任務、前任者の突然の失踪の謎、婚約の決まっている大富豪の令嬢との恋、と密度の高いストーリーが展開しますが、やはりメインは火山の噴火。そりゃ異星人の襲来とか、氷河期の再来とか、巨大隕石の落下とかに比べるとローカルですけども、前もって予測できない災害に襲われた人々、という視点が意外に新鮮でした。

水道の管理官が主人公なので、当時の平均よりも理性的で科学的、地殻や地下水位の変化にも敏感、という視点で語られ、読んでいる我々はそろそろヤバイんじゃないの?とハラハラさせられますが、当人たちは(主人公も含めて)平気の平左。一度逃げた麓の街へもう一度戻ったりしますから。そんなアクション映画顔負けの無謀さも、知らぬが仏と変に納得させられますね。現代が舞台なら自殺願望があるとしか考えられません(そういう映画も多いですけれどw)。

主人公の目を通して語られる、上下水道や建築に関する当時の技術には感動します。しかしそれ以外でも、カタカナには不向きとしか思えない、ローマ風の名前と肩書きが次から次へと登場し、想像を絶する富豪たちの贅沢と堕落ぶり、血生臭さの漂う風習、猥雑さすら感じさせる多国籍な奴隷たちなど、背景となる文化の描写はとにかく細やか。ある程度は覚悟して読まないと、めまいを起こすかも知れませんね。

ただ物語の骨格そのものは、前述のように失踪事件や身分違いの恋といったスタンダードをパニックもので括ったわかりやすく、かつテンポの良いもの。それゆえ、ウンチク盛り沢山でありながら歴史小説に付きものの読みにくさはほとんど感じなかった、という意味で予想外にお買い得な一冊でした。


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