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April 17, 2005

『軌道通信』

『軌道通信』ところ違えど。ジョン・バーンズ著、小野田和子訳、『軌道通信』。独特の言葉遣いに溢れていますが、主人公により生き生きと語られる友人関係の悩みや淡い恋愛の一歩一歩に、思わず知らず引き込まれてしまいます。

荒廃した地球から逃げ出そうと、宇宙船の建造や火星のテラフォーミングが急速に進みつつある近未来。小惑星をくり抜きつつ建造中である宇宙船の内部社会と、その宇宙船の乗務員となるべく、極端に社会性や協調性を重視したプログラムで教育される子供たちを、その中でやや異端である少女の目を通しリアルに描いた作品です。

と言うと、ものすごい管理教育とそれに反抗する不良みたいな図を想像しますが、違います。そこはSFならではの斬新な教育法。AIによる個々のレベルに合わせた出題や、協力して解くことができる個人成績とチーム成績で競われるテストなど。古典的かつ不合理な教育とは一線を画しています。ペア数学やピラミッド数学は、実際にやってみても面白そうなアイデア。もっともAIによる個別プログラムというのが曲者で、そのため主人公たちは行動せざるを得なくなるのですが……。これ以上はネタバレなので、作品を読んで欲しいところですね。

先日紹介した『緑の少女』でもそうでしたが、環境に適応するための必然として、個人の自由や行動が厳しく規制される。またそのための制度や倫理観。というのが、社会系SFのひとつのテーマになっている気もします。ひところは検閲で管理される情報化社会、だった気もしますが。こうしたトレンドの移り変わりは、環境危機に対する潜在的な不安からきているのでしょうか。どうでしょう?

『大暴風』下『大暴風』上
『軌道通信』はどちらかと言うと小さく、落ち着いた、居心地の良いものですが、著者のジョン・バーンズはこれだけではありません。『大暴風では、表題通りの未曾有のハリケーンが地球上に壊滅的な被害をもたらす様を、これでもかっ!というくらい多様な視点から描き、力量のある作家と思うのですが……。以降、日本での刊行が止まっているのが残念です。


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