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April 14, 2005

『戦う都市』

『戦う都市』上『戦う都市』下『戦う船』ではありません。アン・マキャフリー、スティーヴン・マイケル・スターリング著、嶋田洋一訳、『戦う都市。<歌う船>シリーズの紹介は前作で区切り、と思っていたのですが、久しぶりに読んだらけっこう面白かったのでした。

シリーズの中では異色作と言って差し支えないでしょう。神経系をハードと直結した<殻人>をテーマに据えたこのシリーズ。他の作品では<殻人>は宇宙船(<頭脳船>と呼ばれる)に乗って冒険の旅に出ますが、この作品では宇宙ステーションの管理人として「据えられて」います。しかし普段の仕事は地味ながら、直面する危機は半端じゃありません。この非武装のステーションとその住民を、凶悪無比の宇宙海賊から守らなくてはならないのですから。

と言っても「非武装」はダテではなく、真っ向勝負は無理。そこでゲリラ戦を選択するところに妙があります。ステーション内に誘い込み、<殻人>の存在は内密に、略奪や暴行に耐えながら反撃のときを待つ。肉を切らせて骨を断つ、な過程はストレスの多いものですが、その緊迫感が他のシリーズ作品にはないテンションを生んでいます。

加えてそんな戦略色の濃さゆえか、<筋肉>と呼ばれるパートナーとの関係に終始しがちな他の作品に比べて、人間描写が多彩です。ステーションのスタッフはもちろんのこと、ステーションの工事用通路を知り尽くした孤児(のちに<殻人>の養子に)や、文化的差異に四苦八苦する難民の王子など。綱渡りの戦いの中で次第に絆を強めていく……ようで上手く行かなかったり(笑)。緩急に上手く乗せられ、目が離せないったらありません。

オリジナルのロマンスが好き、という人には馴染めない点も多いはず。でも逆に、ここまでアレンジが効かせられる、というのも確かに面白いところですよね。


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