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April 25, 2005

『竜の歌』

『竜の歌』SF? ファンタジー? アン・マキャフリイ著、小尾芙佐訳、『竜の歌』。現在15冊を数えるパーンの竜騎士シリーズ。その中でも、この『竜の歌』に始まり、『竜の歌い手』、『竜の太鼓』と続く<竪琴師ノ工舎>三部作を気に入っています。

このシリーズの舞台は、空から降る糸胞の脅威にさらされている惑星パーン。ローテクの文明まで退化し、糸胞と戦う唯一の手段は炎を吐き、空間を跳躍する能力を持つ竜のみ。操るはテレパシーのような絶対の絆で結ばれた竜騎士。この竜と竜騎士を中心に、糸胞に立ち向かうパーンの人々を描いた一大サーガです。

『竜の太鼓』『竜の歌い手』竜と聞けばファンタジーのようですが、竜騎士との絆はテレパシー、跳躍能力はテレポーテーション、と書けばSFチック。そのうち時間を飛び越えタイムトラベル、埋もれていたコンピューターも発掘、外伝では宇宙船で惑星に移民した人々の物語、と何ともボーダーレスな独特の世界観。しかしシリーズを通して設定に拘泥することなく、ときにヒロイックな強さ、ときには逆の弱さも見せる人間の姿を主眼に描いている点が、このシリーズの本当の魅力でしょう。

そんなシリーズの中でも『竜の歌』から始まる三部作は特にそう。竜と竜騎士を脇に追いやって、パーン上で芸術や娯楽、情報を提供する機能を担う竪琴師たちが主役。少年・少女向けらしく難しい理屈や派手さはありませんが、代わりのわかりやすい展開と丹念な生活描写が、補って余りある人間の魅力を醸し出します。

三部作の前二部が、有り余る才能にも関わらず不遇をかこっていた少女が見出され、自信を深めていくサクセス・ストーリー。後ろ一部は、声変わりによって声という才能を失った少年が別の生き方を模索する物語。どちらも主人公と共に泣いたり、笑ったり、素直に共感できる筋立て。

疲れているとき、落ち込んだときに、何となく手にとってしまう本です。


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