« 『歌う船』 | Main | 『戦う都市』 »

April 13, 2005

『旅立つ船』

『旅立つ船』このオチはアリ? アン・マキャフリー、マーセデス・ラッキー著、赤尾秀子訳、『旅立つ船』。昨日、紹介した歌う船』シリーズの作品です。

もともとアン・マキャフリーの『歌う船』は'60年代に発表されてそれっきりだった作品ですが評価は高く、'90年代から彼女と若手作家との共作という形でシリーズ化されました。この『旅立つ船』は<ヴァルデマール年代記>で有名なファンタジー作家(もともとはSFから書き始めたそうですが)マーセデス・ラッキーとの共作です。

前作の魅力として構成の妙を挙げました。短編オムニバスと言う形式が切れとテンポを生んでいるという意味だったのですが、その点で言うと長編一本である本作は、やや冗長な感があります。これは傑作でないから面白くない、という意味ではなく、それでも面白いものは面白いの意味なんですけど。だって、ホント好きなンですよねエ、コレ。長編ならではの人間関係の描き方や、伏線も効いていて。

シリーズの作品はどれも共作者の『歌う船』への敬愛を感じ取れるものばかり。その中でも『旅立つ船』は、オリジナルのテーマを特に色濃く継承した作品でしょう。そのテーマとは一言で言えば愛(と書いて"ラブ"と読むw)。原因不明の病気のため史上最年長で殻人となった主人公が、数々の障害を乗り越えて愛を成就する、とまったくもってスタンダードな物語。そこにはオリジナル同様のSFチックな冒険や、個性豊かで暖かな仲間たちもあって、ハッピーエンドまで短く感じるはずです。

ところがそんな結末の余韻に浸りながら、ふと気づくのです。思い返せば、『歌う船』は殻人と人間のプラトニックな関係の上に成立した物語。純粋に精神的な絆を求めるからこそ、そこに困難と達成の喜びがあったのでは、と。その「プラトニックな関係」を崩した『旅立つ船』は、掟破りと言えるかも知れません。

もっともオチのつけ方の良し悪しは、やはり各々の読み手に委ねられて然るべきものでしょう。自分に限って言えば、何回読んでもオチで「良かったねえ」とホッとして、「オレってプラトニックじゃ満足できない凡人だな」と思い知った次第です。


« 『歌う船』 | Main | 『戦う都市』 »

Comments

Thank you a bunch for sharing this with all people you actually know what you are speaking about! Bookmarked. Kindly additionally visit my web site =). We will have a hyperlink alternate agreement among us

Post a comment

(Not displayed with comment.)

TrackBack

TrackBack URL for this entry:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/81159/3690698

Listed below are links to weblogs that reference 『旅立つ船』:

« 『歌う船』 | Main | 『戦う都市』 »