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April 26, 2005

『ペガサスで翔ぶ』

『ペガサスで翔ぶ』ファンタジーではありません。立派なSFです。アン・マキャフリイ著、幹遙子訳、『ペガサスで翔ぶ』。マキャフリーなのか、マキャフリィなのか、マキャフリイなのか……困ります。ちなみに検索するときは「アン・マキャフリ*」が便利w

オビにある通り『ペガサスに乗る』の姉妹編であり、合わせて超能力者の活躍する<九星系連盟シリーズ>幕開け前夜という趣きの二冊。本書は、シリーズ全体を通してキーアイデアとなる「電気的ゲシュタルト」――発電機や機械動力から得たエネルギーを利用して爆発的に超能力を増幅する――という能力を発現した少年を中心に描かれています。

脊髄損傷で動かなくなった身体に絶望するこの少年。違法児として(ときにその潜在的超能力以上の)したたかさを発揮し生活してきた少女。この二人を保護しながら、事件や問題の解決に奔走する超能力センターの面々。シリーズ傍流という位置づけのせいか、まとまりはやや欠いている感がありますが、そのぶん多彩なエピソードが詰まった一冊です。それぞれのキャラクターに見所があり、個性が発揮されているところを楽しむべきでしょうね。

「電気的ゲシュタルト」によって人類は効率良く人員や物資を惑星外に輸送できるようになり、やがて他の恒星へ進出するに至った……というシリーズ全体の流れからみれば、本書のこのアイデアの重要性を察して頂けるはず。さらにこれは、超能力モノに付きものの(そして『ペガサスに乗る』でも触れられた)「異端と迫害」というモチーフからの脱却も示唆しています。発展に不可欠な才能として、一般人類に受け入れられるのですから。

九星系連盟シリーズ本体はこのあと『銀の髪のローワン』、『青い瞳のダミア』、『ダミアの子供たち』、『ライアン家の誇り』と続き、才能溢れる女性が要職にあることの責任や孤独、恋人や家族との絆といった(比較的?)身近なモチーフから、異星人との交流や敵対、戦争に至る壮大なモチーフまで移ろっていきます。

長編のオリジナル短編やサイドストーリーが収録されたサービス満点の短編集、『塔のなかの姫君』のまえがきによると、『銀の髪のローワン』と『青い瞳のダミア』の原型となった短編から、この『ペガサス…』の着想を得た様子。そうすると順番は逆になってしまうのですが、しかしこの二冊を踏み台にして、超能力モノでありながらより広くモチーフを拡大していったと考えると、『ペガサスで翔ぶ』と『ペガサスに乗る』はシリーズの発端として欠かせない存在だと思うのです。


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