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March 16, 2005

『名前のない女たち』

『名前のない女たち』センセーショナルなオビの文句につられて読むと、確実に痛い。中村淳彦著、『名前のない女たち』。

古本屋でまとめ買いの中に挟んだのは、まったくの興味本位から。あからさまに言ってしまえば、「体を売る」女性の心理を知りたかったからですが、よく考えると、この手の本でそれを得られるはずない気がします。本を売る側は多数派の常識に訴えるため彼女たちの「堕落っぷり」を誇張したいし、本を書く側は多数派の常識を覆し自己を正当化するため極端な「自由」と「先進性」を訴えたい。

そんな状況の中、最初は興味本位だったこの本との出合いは稀有な偶然と言えるかも知れません。著者の視点のバランスが非常に良いのです。隣人に対する目線というか、そこに居ることに対する許容と、批判だけではない穏やかな思いやりを感じます。背表紙には表題の枕詞として「企画AV女優20人の人生―」とありますが、単なる20人ではなく、様々な20通りの「体を売る」女性の在り方を見せることに成功しています。

とは言え、男性は消費される性の向こう側に生々しい人間の存在を見て萎え、女性は彼女たちに対して痛々しさを感じるかも知れません。この本は性に対する甘い幻想を砕く鉄槌であると同時に、読み手の常識を切り刻む鎌でもあります。重く、痛い。しかし、そうして砕かれ切り刻まれした残骸の中にも、生と性の不可分性だとか、変わらない人間の弱さと強さだとか、社会の醜さだとか、人それぞれに何かを、確かに残す本だとも思うのです。


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