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March 29, 2005

『ブラッドタイド』

『ブラッドタイド』酷な運命の中に見えるのは。メルヴィン・バージェス著、 安原和見訳、『ブラッドタイド』。

個人的なことですが、初めてインターネットを介して本を購入したのがメルヴィン・バージェスの『メイの天使』。紹介の短いあらすじだけでゾッコン惚れ込んだものの、何軒本屋をハシゴしても見当たらず、恐る恐るクロネコヤマトに注文したのでした。手元に届いたときには、それこそ踊りだしたくなるくらい嬉しかったのを覚えています。味気ないと嫌う人もいますが、本屋で買うのとはまた別の魅力がネットにはありますね。

さて、『オオカミは歌う』『メイの天使』と同様に『ブラッドタイド』でも登場人物は逆境に放り込まれ、そして他の二作とは違い、大半の登場人物が救いようのない死を迎えます。とは言え、ヴォルスング・サガを下敷きにした、という作品なので、その咎を作者にだけ負わせるわけにもいかないでしょう。神々と作者の手により与えられた運命は残酷です。

欲に駆られた人間たちと、機械混じりの獣人たち。程度の差こそあれ誰もが独善的で醜く狂気を抱き、信じる者は(読者も!)裏切られ、奪われて、貶められる。救いを求めて読み進むのが無駄と悟ったときには、真逆のものが持つ迫力に捕らえられているはずです。抗いながら運命に流され、倒れるまで駆け抜ける生命の物語。そんな登場人物の姿が、ただひたすら読み続ける自分に重なります。これも古い物語ゆえの、読み手を引き込む力なのでしょうか。


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