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March 25, 2005

『月の骨』

no image子供向けファンタジーをぬるいと感じるなら。ジョナサン・キャロル著、浅羽莢子訳、『月の骨』。

心地よい布団の中に何か異物感があり、その冷たさが眠りに落ちるのを妨げる、といったところでしょうか。(フィクションらしく)あり得ないほど魅力的な現実と非現実を描きながら、時にその危うさも描く。幸せなほど、その幸せを奪われてしまう恐怖と不条理から逃れることはできない。物語が行き来する温度差そのものに、妙なリアリティを感じる作品です。

ファンタジーをぬるいと感じる理由は人ぞれぞれ。記号化されすぎた登場人物たちの感情にリアリティがない、とか。物語を差別化するため細かい設定は作りこむものの大筋として同様の作品が多い、とか。一作、二作は熱くなれても、あまり手広くは読めない。概してファンタジーの世界は幅広さの割りに奥行きは意外と狭い、とも言えるかも知れません。

もっともそれも過去の話。最近のファンタジーを読んでいると、子供向けに書かれながらも大人も読み込める作品、というのにけっこう出会うものです。案外、嘘くささすら求めて楽しむような大人より、物語に対しより純粋な欲求を持つ子供の方が厳しいのかも、なんてことも考えてしまいます。そして、子供向けでないファンタジーとは、ということも。

脱・子供向けファンタジーとして性や暴力の描写を濃くする傾向も見られますが、それだけでは不十分。性や暴力も個人や社会の直面している問題のひとつとして、ファンタジーらしい虚構を描きながらも、ある程度は現実を反映させて欲しい。そんな無理を両立させている意味で、『月の骨』は自分にとってファンタジーのひとつの可能性を見る作品です。


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