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February 25, 2005

『エンダーのゲーム』

no image洋モノSFです。オーソン・スコット・カード著、野口幸夫訳『エンダーのゲーム』。恐ろしいことに、ティーンエイジ未満の子供の話。ただし子供らしくはありません。

才能を見込まれた主人公が、異星人相手の戦争における司令官として鍛えられていく、というスジ。その訓練がタイトルにある「ゲーム」です(読み終えて考えると、もう少し奥深いかも知れませんが)。

人間相手の模擬戦闘を柔軟な発想と的確な指揮で勝ち抜くさまは、胸躍らされます。とんちバトル全盛とも見える少年マンガと比較しても遜色ありません。極端な話、マンガ化しても面白いはずですが、如何せん主人公たちがこう低年齢だと……問題も多いでしょうね。

主人公は平和志向の心優しい少年ですが、これと対照的な主人公の兄の存在が印象に残りました。というより、彼と主人公の関係でしょうか。この兄は、暴力志向が強くサディスティックな面を持ちますが、能力的には主人公に劣るものではない。当然二人は(心底というわけでないにしろ)嫌いあっている。

それで兄と主人公の、あるいはこの二人に代表される考え方の、二項対立に持っていくと予想すると違う。やがて主人公は自分の中にも兄と同じ、暴力的な部分を認める。教官の与える理不尽な試練、他の少年たちの嫉妬の生む妨害、それぞれに抵抗し能力を示そうとする強い心が、結果として生む暴力。主人公はそれを否定しきれない代わりに、全面的に肯定することもできない。悩むわけです。強いて言えば必要悪としての暴力の問題ですが、その難しさを、いがみ合う兄弟関係に重ねたところがえらくツボにはまりました。

戦争の結末、そして主人公が個人的に負った務めからは、暴力への忌避や優しさへの希求といったメッセージが見えます。そういう分かりやすい白黒の領域の間に、灰色の、無理に答えを出さなかった未決の領域がある。娯楽性を追及しつつ、その領域をそのまま残したという点で勇気のある作品だと、そう思ったのでした。


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